2019.9.8
「地球環境科学と私」第十五回は地球惑星物理学講座D2 田口貴美子さんによる 火山研究に携わるようになって得られたこと です.
私は火山活動が活発化する際に観測される地震(火山性地震)の研究を行っています。この言葉は2014年に発生した御嶽山の噴火時に流れたニュースなどで聞いたことがあるかもしれません。この地震は火山性流体(マグマや熱水など)が火道を流れたり、体積変化を起こしたりすることによって発生すると考えられています。そのためこの地震の解析は火山活動を監視するうえで重要なことで、研究を進めるやりがいとなっています。ではどうして私がこの研究に携わっているのか、以下でその経緯を述べたいと思います。
私は学部4年から現在に至るまで地球惑星物理学講座に所属していますが、学部3年の初めは別の講座への配属を考えていました。ですがその年の後期に受講した地震学の授業で、数学や物理学の知識を応用して地球で起きる現象を表す面白さに気づき、地球惑星物理学講座への配属を希望することにしました。そして卒業研究に取り組む前段階として読んでみるよう進められた論文の1つで、火山で発生する低周波地震の周波数をシンプルな式で表せることが述べられていました。これに感動し、私もこのような自然界を表す法則性を発見してみたい、と考えたことが現在まで研究を続けるきっかけとなりました。この式は卒業研究から現在まで、私の研究の根幹をなす大切なものとなっています。
研究を始めてみると、火山性地震の解析結果を解釈するには地震学だけでなく、地殻変動といったほかの地球物理学の研究や、岩石学、地質学や化学といった他分野の知識も考慮することが重要だとわかりました。自分の研究と並行してこうした知識を独学で得るのは思っていたよりも困難で、特に研究を始めたばかりの頃は地震学だけで手一杯でした。しかし修士1年になって学会に参加するようになると、他分野の研究にも触れ、様々なテーマで火山の研究を行う学生と知り合う機会を得ることができました。こうした機会に恵まれたことで、他分野の知識を吸収するモチベーションも上がり、広い視野で解析結果を解釈しやすくなったように思います。
また、研究を進めるうちに海外の研究者とも交流するようになりました。私は学部生の頃から群馬県の草津白根山を研究対象にしていますが、これに加え修士からはコロンビアのガレラス山という火山も対象にしています。ガレラス山に関してはコロンビアの研究者との共同研究であり、お互いに英語で情報交換をしています。さらに国際学会にも参加するようになったことで、最初は不安で仕方なかった海外の研究者とのコミュニケーションも(スムーズとはいかないものの)こなせるようになりました。
現在まで火山の研究を続け、さらに国内外の研究者と交流しているなど、学部3年生のときの自分には考えも及ばないことでした。まだまだ研究すべきこと、学ぶべき知識は山積みですが、こうして振り返ってみるとできるようになったことも多く、何より様々な分野の火山研究者と交流を持てていることは非常に幸せなことだと思います。得られた知識や他者とのつながりを生かして少しでも火山防災に貢献するべく、これからも研究にまい進していきたいと思っています。