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「地球環境科学と私」第三十六回

2023.4.28

「地球環境科学と私」第三十六回は生態学講座 後藤 佑介 さんによる 自己紹介: 鳥と物理と翼竜 です.


自己紹介: 鳥と物理と翼竜 生態学講座 後藤 佑介 

生態学講座の後藤です。私は動物の行動、その中でも特に鳥の風に対する移動戦略に興味を持って研究をしています。今回は簡単に自己紹介をさせていただきます。


私の出身地は長野県松本市で周囲には山や森が多く、四季折々の様々な鳥が観察できる環境で育ちました。そのため小学生の頃から自然と鳥に興味を持ち、鳥の研究者になりたいと思っていました。しかしながら、私は鳥を観察するのは好きでしたが鳥の種類を覚えるのは苦手でした。鳥の鳴き声はさっぱり聞き分けられず、シギやチドリはどれも同じに見えます。そもそも鳥の研究と言っても一体何をすれば”研究”なるものになるのかよくわからなかったため動物の研究は向いてないと考えるようになりました。そこで大学での専攻は当時興味を持った物理学科を選択しました。

その後、修士課程を終える頃に、野生動物の行動を装着記録計で得る研究手法(バイオロギング)の存在を佐藤克文著『巨大翼竜は飛べたのか-スケールと行動の動物学』(平凡社新書、2011)、という本で知りました。そして、バイオロギングデータの解析に、力学系、確率過程、統計力学など物理学のアイデアを持ち込むことで新しい切り口から動物行動の研究ができるのではないかと思い立ち現在の研究を始めた次第です。例えば、確率過程のアイデアを導入することで、バイオロギングによって得た鳥のGPS経路から現場の風を推定する手法や、目印のない海上でも鳥が自身の位置を把握できることの解明などを行ってきました。現在は、鳥の中でもアホウドリやグンカンドリなど、風のエネルギーを使ってほとんど羽ばたかずに数100kmの距離を移動する鳥に興味を持ち、彼らの飛行を超高解像度で記録することでその省エネ飛行の秘密に迫ろうと悪戦苦闘しています。


この風を使った飛行はソアリング飛行としばしば呼ばれますが、ソアリング飛行をする鳥類の行動を調べているうちに翼竜のソアリング能力も気になり、力学モデルを使って現生鳥類と絶滅鳥類や翼竜のソアリング能力の比較も行いました。その結果、これまで巷にはソアリング飛行で1万km以上をひとっ飛びしたとされる史上最大級の翼竜ケツァルコアトルス(翼の端から端までの長さの推定値は約10m)のソアリング能力が低かったという推定が得られました。


その時に面白いと思ったことを研究する行き当たりばったりの研究人生を送って参りましたが、紆余曲折の結果、当初志した鳥の研究をできるようになりまた思いがけず古生物研究にも少し関わることができました。幅広い分野の講座が集まっている地球惑星科学科の特色を活かして、講座を跨いだ面白い共同研究を進められたらと考えております。以上私の略歴になりますが、今後、皆様と共に学び成長していければ幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。


地球環境科学専攻

古今のソアリング生物と地上の生物
イラスト: きのしたちひろ

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